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『奉仕について』 北村 仁パストガバナー

ずもって昨年9月の水害に際しましては、いち早くご支援を賜り厚く御礼申し上げます。

おかげさまで地区内、国内、海外のロータリアンの皆様から

総額5千万円に上る義捐金を賜り本当にありがとうございました。

皆様の心からの義捐金は図書館の再建、そして子供達の教育の為に

その大半を使わせて頂きました。重ねて御礼申し上げます。

さて、ロータリークラブは、寄付団体でも慈善団体でもボランティア団体でもなく、ロータリアンに奉仕の心を授け、倫理を提唱していく団体、即ち、ロータリアンの心の開発を第一とする団体であります。しかもその運動は、良質な職業人の倫理運動なのであります。

このロータリー運動が倫理運動であるという視点を見失いますと、ロータリーの職業奉仕というもの が判らなくなります。さらに、ロータリーの社会奉仕とライオンズの社会奉仕等他の奉仕団体の奉仕活動との区別が判らなくなります。ひいては、ロータリー自体が判らなくなってしまうのであります。

では、ロータリーが倫理運動である事が、一体どこに書いてあるかと申しますと、標準ロータリー定款第4条の『ロータリーの目的』を読みますと、ロータリーがまさに倫理運動である、ということが一目瞭然に分かるだろうと思います。

ロータリーは、倫理運動であるが故に、古来、色々な人々が様々な理念を提唱し、様々な原理を開発して来ました。ロータリーには、1905年以来、先輩 達が素晴らしい知恵を残してくれているのであり、まさにこれは、先輩達の尊い知恵の集積なのであります。従って、ロータリークラブに入会して、ただ漫然とロータリーを過ごすということは、先輩に対して甚だ失礼なことになると思うのであります。 やはり、縁あってロータリーに入った以上は、ロータリーをかくあらしめたいと理想に燃えて色々な知恵を集結してくれた20世紀初頭の先輩達に敬意を表して、その知恵に学ぶ事が大事であろうと思います。

今日のロータリーは、巨大な組織になりました。

このロータリーも100年余の歴史をたどって行きますと、そもそもの発端は、ポール・ハリスという青年弁護士の頭脳に宿った一滴の発想、即ち一業一会員制の発想でありました。これが、ロータリーの組織の原点であります。 そして、この発想のもとに人々が集まり、そしてまた色々な思想が生まれました。ロータリーの思想の世界は決して一枚岩ではありません。この辺の事はハロルド・トーマスの書いたロータリーモザイクに良く書かれております。

ポール・ハリスが一人でロータリーを作ったわけではありません。彼は種を蒔きました。しかし、彼の発想が素晴らしかったので、たくさんの人々が集まりました。そして、それらの思想の下に様々な奉仕の実践が行われ、それが類型化された中で、これこそロータリーだという事を象徴的に表しているのが、実は「職業奉仕」なのであります。

この考え方はロータリーが誕生した翌年1906年に

はすでに芽生えていたのであります。この点をとらえて、誰言うと無く、感覚的に唱えられ出したのが「ロータリーのロータリー所以は職業奉仕の実践にあり」という言葉でした。 今から30年位前までは、耳にたこができるほどこの言葉を聞かされたものでありますが、ここ数年は全く聞きません。誠に残念な事でありました。しかし、これらの反省からか、RIはようやく2007~2010年度優先項目の5番目に職業奉仕を挙げました。これに基づきRI職業奉仕委員会が結成されたことは、誠に私共日本のロータリアンにとりましては喜ばしい事であります。

ただ、この言葉からひとつの誤解が生まれました。即ち、ロータリアンでなければ職業奉仕はできない、とか、ロータリアン以外の人たちは職業奉仕をしていないという思い上がりがロータリアンの中にあったことも事実でありました。しかし昨今、ロータリアンの中で、ほんとうに職業奉仕を実践している人が、一体どれ程いるかと考えた場合、答えは甚だ疑問であろうと思うのであります。 逆にロータリアン以外で職業奉仕の原理を実践している人はたくさんおられます。私達ロータリアンは謙虚に反省する必要があると思うのであります。

職業奉仕という言葉は、ロータリーの専門用語であります。世間一般の人達はこういう言葉は使っていません。辞書を引いても職業奉仕という言葉はありません。なぜなら職業というものは、私達が生きてゆく為の所得を得るための手段であって、これは自分の為のもの、一方、奉仕というものは世の為人の為のもの、即ち自分以外の人のためのものであり、このようにエネルギーの全く正反対の二つの言葉を一つに合体させて職業奉仕と言っているからであります。いわば自己矛盾の概念でありますから、分かりにくいのも無理はないのかも知れません。

一体、自分の為のものである職業が、人のためのものである奉仕のテーマになり得るのでありましょうか。職業を営む事、即ち金を儲けることが、なぜ世の為人の為の奉仕に為りうるのか。職業を奉仕と考える為には、一体如何なる考えが必要なのか。この点が判らないと、職業奉仕は永久に分からない事

になるのであります。

これが所謂、利己と利他の調和の推進であります。最近は一般に、職業奉仕は難しいと、その概念自体がよく理解されていないように思われます。 一例を申し上げますと、一生懸命に自分の仕事をする事が職業奉仕であるという考え方があります。確かに職業奉仕を実践するには、自分の仕事を一生懸命しなければなりません。しかしその逆もまた真なのか、一生懸命仕事をすることは、ロータリアン以外の人達もしています。極端なことを言えば、反社会的な団体でも一生懸命自分の仕事をしています。しかしこれを職業奉仕と言うことはできません。

やはり、職業奉仕とはなにかと言う事を徹底的に理解しておかなければなりません。それは知識として身につく場合もあり、また経験の積み重ねによって身につく場合もあります。 ここでロータリーの例会の問題が出てまいります。

「例会は人生の道場である」と米山梅吉PGは言われました。ロータリーは、例会に出てこいと言うのであります。これが寄付団体であれば、例会を開く必要はありません。ロータリーは最初に申し上げましたように倫理運動であります。世の為人の為に倫理を提唱していく為には、まずロータリアン自身の心を磨かなければ、倫理を高めなければ、世の中に倫理を提唱することができないのであります。従って、例会に出席せよ、と言うのであります。

そして、卓話を聞き、良質な人達との接触を通じて色々なことを教わり、その体験を積むことによって、はじめてロータリーが身についていきます。知識だけでなく、そこに知恵が生まれてくるのであります。

職業奉仕の原理もその知恵のひとつであります。従って職業奉仕の実践は、まず例会に出席することに始まるのであります。そうして全ての職業関係の行動において思いを込めると言う事であります。 これを判りやすく説いているのが「4つのテスト」ではないでしょうか。

自分達の一つ一つの行動の中に思いを込める事でありますから、外から見ている限り全く分かりません。分からないけれども、その人の心の状態が大変大事なのであります。

イギリスでは、ロータリーは「人間の魂のあり方の問題である」とも言われているように、ロータリーの職業奉仕は、心の問題を重視する優れた精神的奉仕であります。このことを先ずもって、心に止めておいて頂きたいと思います。

行動に心を込めるということは、換言すれば、職業を倫理的に営むべし、倫理的な商売を営むべしということであります。

ロータリー活動は職業奉仕について理解を深めることが先ず重要であります。当然倫理運動でありますから、地域社会にも広めて行って頂きたいと思います。ここに会員増強があります。

ご清聴有難うございました。


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